【今回は、教育ボランティア活動に参加された中野先生から、活動報告書の投稿をいただきました。】
中国東北(旧満州) 教育交流の1週間
2013年 糖葫芦の会 第7次キャラバン隊に参加して
中野貞弘(兵庫県立尼崎小田高等学校)
昨年に続き、中国吉林省の農村の2つの小学校を訪れ、英語の授業やカレーライス給食などで交流した。学校規模は50名:学年10名程の大きさである。
1校で40分授業を2時間連続で、計6時間、音楽と図工の授業通訳で4時間、カレーライス作りで2時間、放課後に5・6年生とスポーツ(ドッチボール)やゲーム(ナンバーコール、フルーツバスケット)。
今年は5日間で合計24コマの多忙な日程だった。
子どもたちと生き生きと学び、楽しんだ。休憩時間にはプレゼントした長縄跳び、バレーボール、サッカーボールで遊んだ。昨年の学校には全くなかったバスケットのリングが校庭に(牛心小)、昨年新築された長嶺小学には卓球台、理科実験室、コンピュータールームもあった。「農村部や僻地への教育支援が国の予算からも徐々に行われている」との副校長の発言もあった。
【キャラバン隊の活動場所・期間と日程】
8月25日(日) 関西空港⇒(北京)⇒長春へ
8月26日(月) 長春⇒(天北鎮の中心学校)⇒牛心小学28日午後⇒長嶺小学30日まで
吉林省 蛟河市 天北鎮 牛心村 牛心小学 8月26日~28日
吉林省 蛟河市 天北鎮 長嶺村 長嶺小学 8月28日~30日
時限 |
8/25(日) |
26(月) |
27(火) |
28(水) |
29(木) |
30(金) |
31(土) |
1・2 |
CA162 |
牛心小へ |
3/4年:カルタ作 |
3/4年:体育 |
3/4年:カルタ作 |
3/4年:体育 |
長春発 |
3・4 |
CA1629 |
|
全員: |
3/4年:図工 |
全員: |
3/4年:図工 |
CA1656 |
|
|
|
カレー給食 |
長嶺小へ |
カレー給食 |
|
|
5・6 |
龍嘉空港着 |
3/4年:音楽 |
3/4年:英語 |
3/4年:音楽 |
3/4年:英語 |
長春へ |
CA161 |
【英語の授業】
昨年、小学生への生涯初めての授業を中国の小学校で行った。3年から週2時間、5年からは週3時間実施と聞き、立派な国定教科書を目にしたので随分欲張り、盛り沢山で消化しきれない授業をした反省から、簡単な自己紹介を、原稿を見ずに発表できることを最終目標に実施した。
(a)数詞と序数詞の区別、(b)12ケ月の言い方を学び(復習し)、下記①~⑤を英語と中国語でまとめた書き込み式カードを配布し授業を進めた。
① Hello, my name is ~ ~. ② I’m ~ years old. ③ I’m in the ~th grade. ④ My birthday is ~ ~. ⑤ I like to ~.文型
3,4年合同クラスは、(a)ひと月の日にちを言えること、(b)は用意したフラッシュカードを使い、ゲーム形式で覚えることだけでも60分以上要した。①~⑤の文型中の単語もほとんどが新出語であるのでなかなかハードな授業になってしまった。楽しく達成感のある授業には出来なかった。来年への課題である。
5年生は、④までをカードを見て言えるまで進めた。当然、級友の発表を聞いて誕生日を聞き分けることもできた時は拍手が起きた。6年生は、⑤までを原稿を見ずに完璧に言えることを期待したが、1、2回助け船を出せば、きれいな発音で出来る子は複数名いたので、正規の授業へつながる内容になったかと思う。ちなみに(b)12ケ月の言い方は5年生の前期にある新出語である。中心小学校の英語主任の先生から、今年から改訂された新しい教科書をいただいた。都会の重点校では、しっかりと教え込まれていくのだろう。
【今年、気づいたこと】
授業の最初に中国語で尋ねたら誕生日を農暦(旧暦)、年齢は数え年で答える子どもが何人もいたこと。しかし、子どものころ祖父母や大人たちが数え年で言うのは当たり前で、戦前の農村なら日本でも旧暦中心の生活だったこと、そして現代中国の休日が春節をはじめほとんど農暦によることを思えばそれほど不思議でもないかと思い直した。都市部ではどうだろう。
どのクラスでも英語力の差がかなりあり、最終的には自分の誕生日だけを言えればよいことにしたが、驚いたことに、自分の誕生日を知らない子どもがいたことだ。そんな子には好きな日を誕生日にして答えさせた。また発音上で面白い発見をした。日本の多くの生徒と同様、語尾の子音にはっきりとした母音がくっつくことだ。中国語(普通話)が開音節語と関係があるのだろうか。
【英語の歌】
今年は「Happy birthday to you」「幸せなら手をたたこう」「旅愁」の3曲。いずれもよく知られているメロディーである。「旅愁」は日本に留学した李叔同が、日本語の歌詞をもとに中国語に訳詩し、内容が中国人にぴったり合うのか誰もが中国の歌:《送别》だと信じている曲である。アメリカ人オードウェイの曲であることを知らせることも昨年からの些細な楽しみである。
【その他】
先生方との交流や地元の人々の夕べの楽しみ:“扭秧歌儿”(盆踊り)、“健美操”(エアロビクス)へも参加し、“旅店”(簡易ホテル)での寝 泊まりも新鮮だった。また長春市内では長春工業大学を訪ねたり、日本語学科の学生とも交流する機会も得られた。
「人間生きていくときにね、俺の政府と、お前の政府との仲が冷え込んでいるからって俺には何の関係もないよ。不便になるかもしれないけど、全然関係ない」
「僕はまったく心配していない。中国にいる僕の仲間だって心配していないと思う。どこに行ったって関係ないよ、それは」。 (小澤征爾 朝日新聞2013.9.19朝刊より)
中国瀋陽生まれの世界的指揮者から、日中で草の根交流を続ける人々への心強いメッセージである。